AWHB 03-049
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文:どんぐり教育研究会
マンガ:おちゃづけ

どんぐり・スマイル <4>
「子供の力を信じて、見守ること  その2



幼児・児童期には、「できる」ことよりも、「分かる」というプロセスを大切にしましょう。「頭を使うことが楽しい」と感じるようになれば、子供はぐんぐん伸びていきます。

「うちの子は、○年生ですが、国語の読解が苦手です。語彙力もありません。このままで、大丈夫でしょうか」

「うちの子は、○年生ですが、単位の問題がとても苦手です。どうすれば、できるようになるのでしょうか」

ゼロ歳から中学生までのお子様をお持ちの親御さんとお話をすると、ご相談の中で必ず出てくるキーワードの一つに、「○○ができない」「○○が解けない」というものがあります。

実は、「○○ができない」というのは、勉強に関することだけではありません。

「学校の用意がさっとできない」「あいさつができない」など、ご相談の内容は、お子様の生活全般にわたって様々です。

私は、これまでに頂いたご質問やご相談を総括すると、お子様が「何かができない」事に悩み、「できるようにする」ことが親の責任であると考えておられる親御さんが、少しずつ増えているように思います。

そして、
勉強の「できない」については、多くの親御さんが、「語彙を増やすプリントを買ってきて毎日2枚ずつさせよう」「単位のプリントを集中的にさせよう」と、お子様の「勉強時間や量を増やすこと」で、解決しようとされるのではないでしょうか。

多くの親御さんは、「きちんと子育てすることは親の役目」という社会からの無言の圧力の中で、子育てをされています。

また、地域の仲間と野原や空き地で遊ぶ中で、子供が勝手に育っていった数十年前とは異なり、今は学びや遊びの機会を、一つ一つ親が考えてあげなければいけない時代です。

「本当にこれでいいのだろうか」という不安がつきまとうなかで、特に「勉強」に関しては、子供の「できない」部分が気になり、つい他の子と比べてしまう…

そんな心理から、どうしても「子供にあれもこれもと、プリントを用意して、させようとしてしまう。どうしたら良いのでしょうか?」というメールや電話でのご相談をいただくことが少なくありません。

これまでに受け持ったお子様の中には、同じ中学生でも、国立の附属中学校で学年で一番というお子様から、学校の授業に全くついていけないというお子様まで、本当にいろいろなお子様がおられました。

様々なお子様を多数教えることで、分かったことがあります。

それは、小学校高学年以降になると、プリント的な「勉強」をどれだけしてきたかというよりも、

(1)五感を使った遊びをたくさん行い、頭を使うのが楽しい、と感じたお子様が、学力が伸びている

(2)小さい頃から、本当に好きなことをする自由時間がたくさんあったお子様が、学力が伸びている

(3)幼児・児童期に、生活や遊びを通しての豊富な「体験」を持っているお子様が、学力が伸びている


ということです。

親御さんとしては、「プリントよりも、生活体験のほうが大事なんて、どうして?・・・・」と、驚かれるかもしれません。
そのお気持ちは、よく分かります。

しかし、実際に幼児教室などで多くのお子様が取り組まれているプリントをしっかり見てみると、いろいろな気付きがあるのです。


                      

ここで具体例として、「国語力をつける」というプリント学習について、とりあげてみましょう。

幼児教室では、「草が、○○○○伸びました」の部分に、「ぐんぐん」と書かせたり、ある文章を読ませて、「だれが」や「何をした」の部分だけを抜き出して書かせる、というプリントをすることで、「国語力がつく」と親御さんたちに説明しています。


しかし、ここで注意しなければならないのは、「こういうときは、ぐんぐんと言うのよ」と、周囲の大人が言葉だけを教えても、それが子供の体験からくるイメージと結びついていなければ、文字である言葉に意味をふきこむことは出来ない、ということです。

私は、メールや電話で数年前から、「子供の語彙力が少ないようです。どうすればいいのでしょうか」「子供の国語力をつけるには、どうすればいいのでしょうか」といった内容のご質問を頂くことが多くなり、自分なりにいろいろな研究を調べ、考察を深めてきました。その結果、次のようなことが分かりました。

母国語の学びというものは、生れた時からはじまっているのです。

「ゼロ歳からの子育ての技術」などの著書で知られる、京都大学霊長類研究所の正高信男先生は、赤ちゃんには眠ったばかりの頃から、周囲の大人が「世話をするときに、無言でなく一言そえる」「優しく、ゆっくり話しかける」ことが大事であり、このちょっとした違いによって、言葉の発達に、大きな違いが出ると言われています。

また、神経言語学の専門家の研究によると、言葉を受け取るための基礎ができると、子供は1歳半から6歳ぐらいまでの間に、1日に8単語から10単語の割合で、母国語を覚えていくことが確認されています。

たとえば小さな子供と一緒に遊んでいると、子供が身近にある様々なものに興味をもち、触ったり、噛んだりしたがることに驚かれることと思います。

                       

先日も、私はこんな体験をしました。

2歳から3歳ぐらいの女の子が、私の着ている服に興味をもち、ボタンを触ってきたのです。私が「これはマルよ」と言うと、女の子は「マル」「マル」と嬉しそうに繰り返します。さらに、「ボタン」「赤い」「固いよね」と言葉をそえると、そのつど子供は、2回繰り返して、たしかめるように言葉を発します。

その様子は、まるで世の中にある物事と、言葉をリンクさせることが、楽しくて仕方がない、というように見えました。

これまでにたくさんのお子様を見てきた経験からいうと、この時期(幼児・児童期)のお子様は本当に1カ月見ない間に、急成長をしています。

そして、小学校低学年までのお子様の多くは、イメージできない言葉を耳にすると「それって、どういう意味?」と必ず質問をしてきます。そして、一度覚えると、あっと言う間にその言葉を使いこなしてしまいます。

その吸収力には、本当にびっくりしてしまいます。

毎日一緒にいると、かえって気付かれないかもしれません。

このように考えてみると、
神経細胞が急激に発達する幼児・児童期に、子供が「お母さん・・・・」と話しかけてきても「後でね」と携帯を見ながらほおっておく、一日何時間もテレビやDVDを一方通行で見せておく、ということをされている親御さんは、本当にもったいないことをされているのです。

前回の「どんぐり・スマイル」では、

「子供とのふれあいや会話を楽しんでいる親御さんが、子供を伸ばしている」と書きました。

今日からでも、決して遅くはありません。


子供が学校から帰ってきたら、「今日楽しかったことは?」とじっくり話を聞いてあげる。一緒にスーパーに買い物に行き、会話をしながら食材を選ぶ。散歩の途中で空を見上げ、五感で感じたことを口に出してみる。四季おりおりの花を見にいく。近所の公園で、虫を探してみる。プラネタリウムに出かける。銀行や市役所に出かける等など。

親御さんにとってはありふれたことでも、子供にとっては「わくわく体験」になることが、実は身近にたくさんあるのです。

子供の生活体験を通して、「何故だろう。不思議だな」という知的好奇心を刺激し、考える力・言葉の力を伸ばすために、プリント学習よりも、親御さんの工夫次第でできることが、まだまだあるのではないでしょうか。

              
 2011/02/07掲載

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