AWHB 03-049
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文:どんぐり教育研究会
マンガ:おちゃづけ

どんぐり・スマイル <5>
「幼児・児童期の学習において大切なこと その1」


今何故、子供に虫を獲らせた方がいいのか、その問題を考えるときに、世間の皆さんに是非気付いて欲しいことがあるんです。脳の機能は回転なんだということ。感覚→脳→身体→感覚というように、情報をぐるぐる回していくことがとても大事!
         解剖学者。養老孟司先生の言葉より



「先生!私前回のレッスンの時、先生とうちの子が、授業中遊んでいるのを、見てしまったんです!」

8年ほど前のことになります。その当時私が働いていたお教室の定期面談で、ある年長さんのお子様をお持ちのお母さまが、少し強い口調でこんなことを言われました。

ドキドキしている私に対して、そのお母さまは続けてこんな事をおっしゃいました。

「私はこの子に、夢をたくしているんです。お教室に連れてくるのも、正直(時間もお金も)大変ですが、私は必死なんです。だから、時間一杯しっかりレッスンをしてください。宿題もたくさん出してください」

「先生はうちの子を、どう指導しようと考えているんですか。1年後、2年後のビジョンが伝わってきません。今の先生は、子供と遊んでいるようにしか見えないです!」

そのとき、私は頭をハンマーで、「がーん」なぐられたような大きなショックを受けました。

当時をふりかえってみれば、私は、確かに受け持っていた生徒さん達に対して、「1年後、2年後どうなってほしいのか。どう指導すればいいのか」深く考えずに、ただ毎日のカリキュラムを「こなして」いたように思います。

「これではいけない。親御さんや一緒に勉強してくれる子供たちに申し訳ない…」

私は自分なりに自信をもって「子育てと教育に関するビジョン」を語れる先生になりたいと、そう強く思うようになりました。

それ以来、「子育てと教育」に関する、日本で出版される本や雑誌は、時間がある限りチェックする、子育てカウンセラーや、子供の問題に取り組むお医者さんなどのセミナーには、極力参加する、ということを行ってきました。

お教室では、自分が得た情報を、積極的に生徒さんの親御さんにお知らせするよう心掛けたところ、親御さんも心を開いて、いろいろな悩みや心配ごと、ママ同士で入手した情報などを、どんどん教えてくれるようになりました。

             

その結果、いろいろな事が分かりました。

まず「子供をどんなふうに育てたいのか」とお伺いすると、親御さんご自身が、「そうですねぇ…」と考え込んでしまわれる場合が、とても多いということです。

中でも、最大のポイントは、「
子供の頭を良くしたいのか。それとも、学校のテストで点数がとれるようにしたいのか」親御さんご自身が、その違いに気付かれていないというただ1点にあるように感じます。

実は、ただ「子供が学校のテストで点数がとれるようにする」だけであれば、そう難しいことではありません。

特に、小学校低学年(場合によっては、小学校高学年以降も)までは、子供を机に押さえつけて、演習を繰り返し、答えや解法を長時間かけて(または、子供が覚えるまで)丸暗記させればいいのです。

しかし、これでは「頭」は良くなりません。まして、これからの時代を生き抜く上で最も大切な、「未知の問題をみても、何とか自分の力で取り組もうとするタフな精神力」など育つわけもありません。

私たちは、「○○さんちの○○くんは、勉強ができる」という言葉をよく使います。「うちの子も勉強ができるようになってほしい」というのは、多くの親御さんに共通する願いの一つかもしれませんが、厳密にいうと「勉強ができる=頭がいい」とは、言えない場合もあるのです。

「勉強ができるから、頭がいい」のではなく、「頭を鍛えれば、(良くすれば)勉強もできるようになる」のです。

その順番を、まずはしっかり確認されることを、強くおすすめしたいと思います。

             

では、どうすれば「頭を良くすること」が、出来るのでしょうか。
「本を家に1000冊そろえる」「休みのたびに、知的な体験ができる旅行につれていく」など、お金と時間をたっぷりかけないといけないのでしょうか?

実は、本当は、拍子抜けするくらい簡単な話です。

「ほんとかな?」と思われる方も多いと思いますが、
「子供においしい食事を食べさせておなかがすかないようにし、愛情あふれる言葉をかけ、自由な遊びの時間と場所を保障する」これだけで十分です。

かつて、幼児教育の父フレーベルは、「遊びは学習の最高の段階だ」と語り、幼児・児童期における「自由な遊び」の重要性をうったえました。

多くの教育研究者や脳科学者が指摘するように、(養老孟司先生もそのお一人です)子供にはこの世に生まれた瞬間から、本能的に自分自身を育てるプログラムがインプットされています。

一例をあげますと、赤ちゃんは誰が教えなくても、時期がくると自然に「ハイハイ」をはじめます。この「ハイハイ」によって、赤ちゃんの世界は、大きく変わります。たとえば、一歩歩くごとに、目の前の対象が大きくなる、という感覚が入力されます。赤ちゃんにとっては非常に大事な「お仕事」です。

この瞬間、五感を働かせて脳に情報を送り込むことで、脳の発達がうながされるのです。

さらに養老孟司先生は、「
ハイハイすると、赤ちゃんの目から見える☆の絵はどんどん大きくなっていくけれど、☆の形であることは変わらない。これは算数で習えば比例です。習わなくても脳は比例を知っています。」と言われています。

また反対に、「
脳の中に既にあるものでないと、いくら説明されても本当には理解できない」という内容のことも、様々な著書を通して繰り返し主張されています。

このようにみてくると、赤ちゃんの「ハイハイ」と同じように、幼児・児童期の、五感を刺激する「自主的な遊び」の重要性が、次第にみえてくるのではないでしょうか。

たとえば、養老先生おすすめの「虫とり」は、虫の行動を観察して、「次はこっちにくるからここで網をふって」というように、脳がぐるぐる回転するから理想的、ということですが、私は「虫とり」でなくてもいいと思います。子供が本当に「やりたい」ものであればいいのです。

数十年前の子供がよくやっていた「缶けり」「鬼ごっこ」「森の中での探索」「木登り」等は、最近では近くに場所を確保するのも難しいかもしれません。(詳しいことは、日本全国それぞれの地域で、子供の遊び場を確保する活動をされているグループがあります。調べて見ると良いと思います)

これらの遊びは、子供の頃をふりかえってみると、本当に楽しかったです。

「虫とり」は大抵の女の子は好きではないですが、私の姪は小学生の間、夏休み中、「セミとり」に熱中し、さらには「セミと一緒に歌うこと」を、楽しんでいました。

子供一人一人によって、「楽しい」と思う事は、全く異なるようですが、子供の時期限定で「自由に楽しめる」ことの中に、「幼児・児童期の学習のヒント」や「将来の仕事の種」があるように感じます。

(次回に続く)

              
 2011/02/18掲載

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