AWHB 03-049
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文:どんぐり教育研究会
マンガ:おちゃづけ

どんぐり・スマイル <8>
「家庭で育てたい 子供の知的体力 その2」


感動するということは、脳の持つ潜在的能力を引き出す最も大切なメカニズムです。小説や映画にふれて感動したり、あるいは実生活での体験を通して、感動を味わう。その積み重ねによって、どんどん脳の潜在能力が発揮される。そのためには、常に意欲と希望をもって、日々前向きな気持ちで生きること、そういう生き方を心掛けることが一番です。
   
     脳科学者・茂木健一郎先生の言葉より



子供が「将来困らないように」、わが子に「もっと、勉強を頑張ってほしい」「家庭学習を、しっかり習慣づけてほしい」と、日々頭を悩ませている親御さんは、多いのではないでしょうか。

しかし、「言えば言うほど、子供が反発する」「子供が口答えばかりする。毎日が親子バドル」というご家庭も、決して珍しくはないように感じます。

私はこれまで、500組以上の親子と直接お話をし、毎日平均2〜3件のメールや電話での教育相談にお答えしています。

その中で、「
勉強しなさい、と子供に強制することは、むしろ逆効果。子供が自主的に楽しく勉強するようになるには、親御さんの工夫と、良好な親子関係の確立が大切」というのが私の経験から得た結論です。

実は、このような私の経験にもとづく「親はあまり、勉強を強制しないほうがいい」という考えを、学問的に裏付ける研究データがあります。発達心理学の本の中では、時々登場する事例ですが、現在子育て中の親御さんには、何かと参考になるのではないでしょうか。ここで簡単にご紹介させていただきます。
     

ドイツの研究者D・C・マクレランドは、ドイツと日本の親子の「達成動機」についての関係を調べました。この「達成動機」とは、何かを成し遂げようとするやる気や、意欲のことです。

この「達成動機」の高さによって、母親を「意欲最高群」「意欲高群」「意欲普通群」「意欲最低群」の4つに分類し、それぞれの子供の意欲を調べたところ、意外なことが分かりました。

実は、母親が「意欲最高群」や「意欲最低群」だと子供の意欲は低くなり、逆に母親が「意欲普通群」の子供の意欲が最も高い、という結果となったのです。

つまり、母親の意欲が高すぎると、子供に期待する目標も高くなる。それが、結局のところ、子供の意欲を低下させることにつながってしまう。

しかし、母親の意欲が低すぎる場合もまた、子供の意欲を引き出すような働きかけや刺激をしないため、同じく子供の意欲は低くなってしまう。

この研究が示すことは、勉強に限らず、スポーツでも芸術でも、何でも同じかもしれません。つまり、
子供の意欲を引き出すには、「適度な働きかけと、ゆとりをもって見守っていく姿勢」が大事であり、反対に「親が、○○でなければ、というあまり強い思い込みをもったり、あせったりするのは、良くない」ということです。

最近では、育児を助けてくれる親戚も近くにいない、近所の人々とのつながりも希薄など、子育て中の親子を取り巻く環境は、大きくかわりました。今日、お母さんが育児に孤軍奮闘することは珍しくありません。

そんな中で、「この子をしっかり育てるのは、私の役目」「失敗はできない」と、緊張しながら子育てをされている親御さんが、大変多いと感じます。

親御さんご自身の不安やあせりから、特に子供の「勉強」に関しては厳しく、子供が学校から帰って来ると「待ってました」とばかりに、「早く勉強しなさい」ときつく言ってしまいがちです。

また、親御さんにしてみれば、「今勉強しておかないと、将来困るのではないか」「だらだらせず、効率よく時間を使う子供になってほしい」という親心から、子供の気づきを促す、ただの声かけをしたつもりなのです。

しかし、感受性の強い子供は、このような親の言動を、「自分の気持ちを無視した一方的な指示・命令」「親からのコントロール」と受け取ってしまうことがあります。「指示・命令」や「コントロール」は、子供であっても嫌なものなのです。

     

では、どうすればいいのでしょうか。
実は、ある行動を起こそうとする理由「動機づけ」の中には、「ごほうびや罰など、外部から与えられる賞罰にもとづく外発的動機づけ」と、「何かを面白い、楽しいと思う気持ちや、知的好奇心にもとづく内発的動機づけ」がある、の二つがあります。

そして、自分自身の「知りたい、理解したい」という内発的動機づけが生れてくると、自分で目標設定を行い、自発的に学ぶようになるということが、多くの発達心理学の実験で確かめられています。

ですから、
一生を通してぐんぐん伸びていく「勉強の好きな子供」「勉強が楽しいと思う子供」に育てたい、と親御さんが思われるのであれば、「今度のテストで100点とったら、○○を買ってあげる」といった、声かけは「逆効果になる」ということを、意識してください。

「自分から勉強する子供」になってほしいのであれば、「子供に勉強させよう」というよりも、「子供の興味にあわせて、いろいろな体験を親子で楽しむ」といった、知的刺激のある環境を整えることが、何よりも大切です。

たとえば、最近多いご相談の一つに「うちの子は、理科が苦手です」「まだ、小学校3年生ですが、学校の理科の教科書にかいてある内容が、全く分からないようです」というものがありました。

この場合も、「学校で何を習っているの」「こんなことも知らないなんて、ママは信じられない」等と、子供を否定する言葉をかけるのは、NGです。

たとえば、子供が学校から帰ってきたら、「今日は学校で何があった?」「どんなことを習ってきたのか、ママにも教えて」と、おやつでも食べながら、子供の話をまずは聞いてあげましょう。

すると、話の流れの中で、自然に「授業の内容」にもふれていくことになり、その中で「今日は○○を習ったけれど、難しかった」「○○という言葉が、分からなかった」など、子供が自分の気持ちを、素直に表現できるようになります。

毎日でなくても構いません。出来る曜日だけでも、1日15分でもいいのです。子供の話をさえぎらず、「うん、うん」とうなずきながら、しっかり聞いてあげる。その中で、子供が「分からないことは、分からない」「難しい言葉の、意味を教えて」と、正直に言えるような、ほっとできる家庭の雰囲気を作ってあげることが不可欠なのです。

さらに、親御さんが子供の教科書を見て、「小学校3年生の理科では、昆虫と植物、日陰と太陽の動き、光の反射、磁石、物と重さ、などを習うのね。うちの子は、昆虫が苦手だから、今のうちから少し慣らしておこう」など、少しだけ配慮をしてあげると、子供はぐっと理科が好きになります。

ご自宅で何かを「育ててみる」のもいいですし、「ファーブル昆虫記」などを本屋さんで買ってきて、「読み聞かせをする」のもおすすめです。

また、
春から初夏にかけては「いちご狩り」「潮干狩り」など、理科・社会の勉強にも役立つ、親子で楽しめるレジャーが増えます。特に私のおすすめは「潮干狩り」です。私も子供の頃、時々出掛けましたが、今でも楽しい思い出として、鮮明に記憶に残っています。

くまでや、スコップなどの、上手な道具の使い方も覚えますし、「食育」としての意義もあります。6年生の歴史で習う「貝塚」にも、親しみがわくようになります。(縄文時代から、あさりは食べられていたのですね)

「潮干狩り」で、初めてあさりをとったその日、小学3年生だった私は、「おみそしる」になる前に、海水につけられて、ごそごそ動いている沢山のあさりを見て、本当にドキドキし、感動したのでした。

        2011/03/20掲載

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