AWHB 03-049
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文:どんぐり教育研究会
マンガ:おちゃづけ

どんぐり・スマイル <10>
「情報過多のテレビ時代に、
          子供の目と脳を守る その2」


つかみどころのない「それ」に耳を傾けようとして、二人の人間が共に沈黙を共有する。これは、心理療法の中核にあると言っていいし、あらゆる深い人間関係の基礎にあることではないだろうか。これを無視してしまって、便利になったとばかり喜んでいたのでは、世の中だんだん人間味を失ってゆくのではないだろうか。
       臨床心理学者・河合隼雄先生の言葉より



未曾有の大被害をもたらした「東北関東大震災」から、一か月。この1カ月、誰と話をしていても、いつしかその話題になってしまいます。

私自身、近い親戚が仙台におります。地震直後は数日間連絡がとれず、「生きているのだろうか」「けがをしたのではないだろうか」「水はあるのだろうか」と、夜も眠れぬほど心配でした。

地震発生から数日後に、ようやく安否を確認することが出来、「自治会の方によくしていただき、大丈夫」ということが分かりました。

今回の震災では、死者・行方不明者の数3万人。生活の場を失い、避難した方は、4月現在、17都県約2200か所で、16万人にものぼっています。

未曾有の災害と、東日本にやまぬ余震、原発事故。
これから先、日本はどうなるのだろうかと、誰もが不安になってしまう時期です。同時にまた、テレビで繰り返し流される大津波や、原発事故の映像が、子供たちの心に与える影響が、心配になってきました。

被災者はもちろんですが、被災者でなくても、被災現場をテレビで見ることによって引き起こされるPTSD(心的外傷後ストレス)は、日本では1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、広く認知されるようになっています。

小学生のお子さんの場合、一見元気そうに走り回ったり、遊んだりしていても、夜になると「眠れない」と訴えることがあります。

普段は使わない幼児言葉を使ったり、まとわりつく、抱っこをせがむなどの「幼児がえり」は、強いストレスを受けている状況下では、当たり前におきてくる現象です。

このように、子供が「過度な不安を抱えている」というサインを発見したら、周囲の大人には普段にもまして注意深く、子供を見守り、支えていくという覚悟が問われます。

また、もう一つ。私自身の経験をふりかえってみても、大人の情緒が安定していないときには、特に意識したほうがいい、と思うことがあります。

それは、
子供が話したいということはきちんと聞いてあげるが、そうでない場合、普段とは違う行動をとる子供に対し、「お母さん(先生)に話してごらん」と無理に話させ、子供が抱えている不安やストレスの内容に、ぐいぐいと深入りすることは、決してしないほうがいい、ということです。

(好きなように絵をかかせる、いつもより時間をかけてお風呂に入れる、ある一定の時間ほっておく、抱きしめて背中をさする、などは、子供の情緒の安定に必要なことです)

子供は大人が思う以上に、感受性が強く、イレギュラーなことや、変化に弱いものです。今の時期は、地震や災害の不安だけではなく、新学期がスタートしたばかり。新しい環境やお友達、生活の変化になかなか馴染めない、というお子さんも、少なくないかもしれません。

たとえば、朝の学校の支度に、いつもよりも時間がかかる。「行きたくない」と言って、泣いたり、叫んだりする。ちょっとしたことで、涙目になる。学校から帰ってくると、(親がいそがしいときに限って)意味もなくまとわりついてくる。。。。

そんなお子さんに対し、いけないと思っていても、「一体どうしたの!」と、詰問口調で問い詰める。子供の失敗を、許せずに、繰り返し強くなじってしまう。それでまた、親御さんご自身が余計に自分を責め、感情のコントロールがきかなくなってくる、という場合もあるかもしれません。

               

実は、今の子育て世代は、携帯やパソコンで情報がサッと簡単に手が入る、という生活に、すっかり慣れてしまっています。

「知りたいことは、今すぐ知りたい」「すぐに答や結果が出ないと、イライラする」「子供を見ていても、待つのが苦痛で仕方がない」という方は、このコラムを読んでいる親御さんの中にも、もしかしたら、おられるのではないでしょうか。

もちろん、今の時代を生きている以上、情報収集やコミュニケーションのために、ネットや携帯に依存するのは、当然ですし、必要なことです。

しかし、今の日本の現状をみると、メディアやその機器は、日々増えています。パソコンでしか見られなかったインターネットも、今日ではいつでもどこでも楽しめるようになりました。

明らかに、今の子育て世代を取り巻く環境は、「情報過多」になっていると感じます。

次々に更新される情報やニュースを追い続けていないと、何となく自分だけ取り残されたような気持になる。。。。。
インターネットは常時接続。興味のあるサイトを、次々にネットサーフィンしてしまう。家にいる時は、常にテレビをつけていないと、音のない空間に耐えられない。。。。

現実に、ある教育雑誌の調査によると、大人がメディアに接する時間は、この2年の間に、急増「例 子育て中のママのインターネット利用時間トップは、一日平均2~3時間(28%)テレビの視聴時間は、1日平均4時間以上(47%)」しているようです。

もしも、
「子供と話す時でさえ、すぐに答が出ないとイライラする」「携帯やパソコンを見ていて、子供の声に気づかないことがある」という場合には、大人はちょっとネットや携帯を見る時間を減らす、手放す努力が、必要かもしれません。
     

私は毎日、平均すると2〜3件のメールやお電話での教育相談をお受けしています。

その中には、「私はどんぐり的環境設定の中の、ジックリ・ゆっくりが大変苦手です」という内容のご相談をお受けすることが珍しくありません。

これまでのご意見やご相談を総括すると(、これは、どんぐりの取り組みだけではないのですが)
能力があって、子育てにも熱心な親御さんに限って、「先の見えない時代を生き抜くには、子供に最大限の力をつけなくては」「育児も家事も、完璧にこなさなくては」と、何かとがんばりすぎてしまう傾向があるように思います。

しかし、「自分はこんなにがんばっているのに。。。。」という気持ちは、時として子供に過大な要求をつきつけてしまいます。足りないところが目について、ついつい、分かっていても「あれもダメ」「これもダメ」と言ってしまうのです。

言葉は、人を笑顔にする力を持っていますが、反対に人を怒らせたり、悲しくさせたりする力も備わっています。大人同士の場合は、経験上それが分かっていますので、人と話す時は相手が不愉快になる言葉は、意識して避けようとします。

ところが
相手が子供、特にわが子となると、どうしても不用意な言葉、思ったままの言葉がポロっと出てしまう。

「もー、何やってんの」「本当に、どうしようもないわね」「違う!そうじゃないでしょ」といった、子供の心を傷つける言葉が、親御さんの口癖になっている、というときもあります。

子供は、周囲の大人の仕草や表情、行為や行動の一つ一つを見ています。

学ぶとは「真似ぶ」ことであり、親から自分を否定される表情や言葉を、あびて育った子供は、親になったとき、それを繰り返してしまうかもしれません。

相手が小さい子供であると、教科書通りにはいかないことばかりです。「子育てに一番大事なことは、子供の力を信じ、見守ること」という大原則を、大人が不安で一杯の今こそ、再認識することが大切であると感じます。


        2011/04/23掲載

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