AWHB 03-049
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文:どんぐり教育研究会
マンガ:おちゃづけ

どんぐり・スマイル <15>
「絵をかくことで育つ力 〜想像力と共感力 その5」


赤ちゃんは感情むき出しですが、成長するに従って、社会生活をする上で必要な「がまんの心」を育てていきます。
このとき、とても大切なもう一つの能力、「表情などから相手の心を読む能力」が、さらに磨かれます。
たとえば、子供同士でオモチャの取り合いになったとしましょう。1歳ぐらいの小さな子供は、相手が泣いていようがおかまいなしで、自分の感情を優先させます。でも、がまんの心が育つと、相手にオモチャを譲ることが、できるようになります。
そうするのは、相手が悲しんでいることを理解している、つまり相手の感情を読みとることができているからです。相手の気持ちがわからなければ、自分の感情を抑えることはできません。
  脳科学者。東邦大学医学部教授・有田秀穂先生の言葉より


先日、ある心理カウンセラーの先生が主催される「子育て講演会」に参加し、とても有意義なお話をうかがいました。(この講演会は、定期的に福岡で開催されており、参加者が自分自身の悩みを直接先生にお聞きすることができます。)

参加された皆さんの中で、
特に子育て中のママからの質問が多かったのは、「子供をどう叱ればいいのか」「叱りはじめると、親自身の感情のコントロールができなくなり、困っている」という、大変切実な問題でした。

「いけないと分かっていても、ブレーキがかからなくなります。感情的になり、つい大声を出してしまい、後でひどい自己嫌悪におちいります」「ダメなことを一言で、子供に短く伝えることができません。いつまでも、くどくどと繰り返し、必要以上に責めてしまいます」

「親がキレて怒鳴ったとしても、あとでフォローをすれば大丈夫、と育児書に書いてありました。キレてしまったあとは、すぐにフォローするよう心掛けていますが、本当でしょうか。子供がかえって混乱するのではないかと、心配です」

このコラムを読まれている皆さんの中にも、同じような悩みをもっておられる方が、いらっしゃるかもしれません。

子供の「叱り方」、「してはいけないこと」を伝える言い方は、本当に難しく、親御さん自身にとっては一番頭が痛い問題ではないでしょうか。

               

ここで私が、多くの親御さんに
強くお伝えしたいことは、「育児書にかいてあることが、全て正しい訳ではない」「子供の性格をみながら、それぞれの親子にあった方法を、日々模索することが大事」ということです。

何の本でも同じですが、育児書は特に、「どんな立場や専門の方が、どういう思いでこの本を執筆されているのか」を、読者がきちんと読み取ることが、最も重要であると感じます。

(たとえば、「親がキレて怒鳴っても、あとでフォローをすればいいですよ」という内容の育児書をかかれた先生は、境界性人格障害の治療などがご専門の、精神科医のお医者さんです。先生のご著書には、「親御さんの子育てに関する神経症的な思いこみを排除し、メンタル面での負担やストレスを軽減してほしい」という願いがこめられているように感じます)

「○○をしてはいけない」という神経症的な思い込みが、非常に強い親御さんに対して、「親がキレるのは、子育てに一生懸命になっているあかしです。大丈夫ですよ」というメッセージを送るのは、時には必要なことかもしれません。

しかし、実際にすべての親子関係において、「親がキレても、いいんです。後でフォローすれば大丈夫」というのがあてはまるかというと、私は決してそうではないと思います。

お子さんの気質や、発達段階によっては、(特にお子さんが3歳未満である場合)「お母さんが怒ったり、優しくなったり、コロコロ変わるように思えて、子供が反対に、情緒不安になる」という場合もあるかもしれません。

先日参加した講演会でも、主催された心理カウンセラーの先生は、この「親がキレたあとのフォローをどうするか」という内容のご質問に対し、
「大声で叱るのは、命にかかわる危険があるときだけ。それ以外は、必要はありません」「キレて怒鳴るのは親の都合でしょう。それを、後でフォローすれば大丈夫というのは、親が自分自身を納得させたいだけです。本当に子供のためを思うならば、親がキレない練習をするしかありません」と、話されていました。

確かに、私個人としては、「後でフォローすれば大丈夫というのは、親が自分を納得させたいだけ」という先生のご意見は、納得がいきました。

しかし、頭では理解していても、特に子供が「お友達を叩く」「お友達のひどい悪口を言う」など、「この子は、社会性がない」と感じられる行動をとったときは、「他のママや先生にどう思われるか」「自分のしつけが、なってないと思われるのではないか」という不安も手伝って、多くの親御さんは、とても冷静ではいられなくなる、というのが現実かもしれません。

たとえば、同級生が遊びにきているときに、自分の子供が「キレて、暴言をはいている」または「借りた鉛筆を、ポイと投げて返している」ところを、たまたまママが目撃した、としましょう。

「危ないでしょ。○○君に謝りなさい!」「○○君が、どんな気持ちになるか分かるでしょう」「本当にこの子は、いつも乱暴なんだから。そんな子は、ママ嫌いよ」というのが、怒ってカッとなったママから出てくる、通常の叱り方かもしれません。

しかし、残念ながら、一時的に子供を叱りつけても、大体の場合は、「分かりました」「ごめんなさい。もうしません」と言いながら、子供はまた同じことをくりかえすことになります。
     

私は、これまで1000組以上の親子と対面し、メールやお電話で数多くの親御さんの悩みをお聞きしています。

その中で、分かってきたことがあります。それは、
「幼児期や児童期に、乱暴なふるまいや激しい感情の起伏がめだつ子供がいたら、その行動の裏にかくされた、心のメッセージを読みとることが必要である」「一方的な指示・命令や、おさえこもうとする強い指導は、かえって子供の問題行動を助長する場合が多い」ということです。

お友達を傷つける、危ない行動をくりかえすというお子さんの中には、「いつも強く叱られている、常に何かをしなさいとせきたてられている、自己主張しても話を聞いてもらえない」などの要因から、脳が強いストレス下での機能低下をおこし、冷静に判断をすることができなくなっている(つまり、キレやすくなっている)という場合があります。

また、強いストレスを受けているというのではないのですが、長時間のテレビ視聴や、低年齢からのゲーム機の普及などの影響もあり、最近では、「相手の表情から、気持ちを読みとるのが苦手」「自分がやったことの危険性や、相手に与える影響を想像するのが苦手」というお子さんも、増えているように感じます。

人間は相手が何かの行動をとると、自分もその行動を頭のなかでイメージ化し、想起しなぞってみることで相手を理解するということが、最近では脳科学者の研究により、次第に明らかになってきました。(これにかかわる神経細胞群は、ミラーニューロンといわれています)

そして、相手の気持ちは、言葉やしぐさによって表現されており、その表現されている「気持ち」を察知する能力が、共感性と言われるものなのです。

(次回に続く)

        2011/07/27掲載

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